リバースオークションの現状と展望について

1.リバースオークションとは

 リバースオークションというシステムは既存のオークションシステムとは買い手と売り手の立場がちょうど逆になり、価格を競り下げていくものです、買い手は必要とする商品の条件(仕様)と、買ってもいい価格(上限価格)を提示します、これに対し、複数の売り手企業が一定期間中、継続的に競い価格を提示していき、結果安い価格を提示した相手から順に、取引交渉権が与えられというシステムです。

 そして入札の際には参加各社は自社の順位や現在の最低入札価格などをリアルタイムで把握しながら、決められたルールの中で何度でも応札ができるもので、「一回札入れ方式」等に比べて、競争状況を見ながら、より戦略的な価格提示を繰り返し行なうことが可能です。

 

2.リバースオークションのメリット

(1)価格の最適化と品質向上 

 リバースオークションと他のシステムとの最大の違いにしてメリットは、従来は、相見積もりなどによるアナログ的な交渉になり、人や会社の兼ね合い次第で最適価格が見いだせなかったのが、純粋な価格競争が可能となり、最適価格が私情を挟むことなく公平・公正な競争のもとに実現できます、 そして、価格の提示にプラスアルファして、品質担保のための戦略を前提条件としてつける事が可能で、そのことにより、価格を下げると同時に品質向上を目指して交渉を行い、その結果、値段を下げるという事と同時に品質の向上を上げるという本来であれば矛盾することを実現することが可能となります。

(2)本来の意味でのコスト削減、リストラが可能

 そして、リバースオークションを使用することにより、ただ単に調達、仕入れコストを抑えるだけに止まらず、トータル的なコストを削減することが可能になります、具体的にいうと、A商品、B商品の価格が下がったというだけでは無く、A商品を仕入れるまでの運送コストであるとか、バイヤー(売り手の担当の人)の見積もり依頼、価格査定や対面交渉などの調達コストを効率化し、短時間でベストプライスの獲得を可能にし、その結果、バイヤーの担当の人員を少なくし、違う部署に再配置(リストラ)をすることが可能です、その結果、商品知識を誰よりも持っている優秀な人材であるバイヤー担当者の人数を減らし、同時に店頭、コアビジネスへの再配置が可能になり、そのコアビジネスへの再配置により売り上げを伸ばしつつ、リバースオークションにより仕入れ原価を抑える=利益の増大、という本来の意味でのリストラが可能になります。



(3)バイヤーだけではなく、係る人全てにメリットがある

 そして、リバースオークションというシステムは、バイヤーのみ利益が生まれるというものではなくサプライヤー(買手)に対しても、大口の新規顧客先を発見できると同時に、先々までの予定がハッキリするので、在庫解消、管理コストの削減、営業の効率化というメリットをもたらすことができます、そして入札にあたり、参加各社は自社の順位や現在の最低入札価格などをリアルタイムで把握しながら、決められたルールの中で何度でも応札ができるので、価格を下げることにより、受注意欲を反映させることも可能であり、どうしても取りたい案件等であれば、価格競争のもとに価格を下げて、取ることが可能になります、ネットプレナー(システムを利用させる人)に対しても当然手数料、成果報酬による収入というメリットがあり、「バイヤー」「サプライヤー」「ネットプレナー」の3者がともにwin-win-winとなるシステムになり、このビジネスモデルは、顧客の”予算マッチイング”であり究極の顧客志向ビジネスということができます。

 

(4)利用もコストがかからず簡単に導入できる

 リバースオークションを利用するさいも、多くの場合は、コストをそれ程かけずに、導入し、簡単に利用をすることが可能です。

 というのも、もちろんそのためのアプリケーションを販売している会社もありますので、自前でシステムを構築をしても構いませんが、リバースオークションを扱っている会社の多くがASP(アプリケーションサービスプロバイダ)を導入していますので、インターネットを通じて顧客にアプリケーションをレンタルすることにより、ユーザはブラウザを使って、ASPの保有するサーバにインストールされたアプリケーションソフトを利用するだけで、リバースオークションに参加することができ、導入費用がかからず、簡単にリバースオークションシステムの利用を開始することが可能です。

3. 米国でのリバースオークションの現状

 (1)リバースオークションの歴史

リバースオークションの始まりは米国で、1998年頃にインターネットを活用した買い手主導の取引概念が生まれ、プライスライン社がビジネスモデル特許を取得して航空券販売でヒットし知られるようになりました、リバースオークション方式は、爆発的な人気を集め、特許を買い取ったプライス・ライン社は、1999年には80万枚の航空券を販売し、さらに、ホテル予約、レンタ・カー、新車販売、住宅購入資金借り入れ等、リバースオークション方式による取引は次々に窓口を広げていき、その後取り扱い品目をレンタカーやホテルなどに拡大していきましたが、類似のビジネスも次々と生まれ、プライスライン社マとイクロソフト社のビジネスモデル特許をめぐる訴訟は当時はかなり、話題になりました、結局は使用料を支払うことにより両社は和解した。

 プライスライン社はソフトバンクとの合弁会社を2000年の夏に設立し日本進出をはかったものの、米国での業績が思うように伸びず2000年末に日本進出計画を白紙撤回、2001年にはテロ騒動で業績を落とすも、2006年46月期のプライスライン社の業績は、広告費用が前年の2倍近くに膨らんで業績自体はよくないものの、総旅行予約額(顧客が同社のサイトで支払った税金・諸費用を含むドルベースの金額)63%増と大幅な伸びを示し、米国内では、航空券の売り上げが前年同期比4%増加、ホテル宿泊日数も前年比83%増、レンタカー利用日数も30%増加し、本業のリバースオークションによる売り上げ自体は堅調に伸びをみせてるという現状です。

(2)米国(プライスライン社)のリバースオークション

 プライスライン社のリバースオークションによるビジネスモデルは、顧客が予め提示した希望価格を複数のベンダーに提示し、この価格で商品を提供できるベンダーが名乗りをあげ、その顧客が商品を自分の提示した価格で購入できるというもので、顧客の入札は1回だけで、規制により航空会社を選ぶことはできない、顧客から送られてきた情報のうち、希望価格だけをプライスライン社は、契約している航空会社8社(そのうち4社は、上位6社以内)に提示し、航空会社としては、空気を運ぶならば、格安でも顧客を運んだ方が利益になるので、その希望価格が破格でない限り、空席が空いていれば希望価格で販売する、というもので、本来、航空券の値段は航空会社または代理店が設定した価格その他の条件を前提に成立するが、航空会社は平均して30%〜40%の空席率で飛行機をフライトさせており、この空席はいわゆる「不良在庫」と呼ばれるものであった、その不良在庫を処分する方法をもっていなかった、顧客としては、航空会社が一方的に指定した条件を受けるしかなく、選択の余地は限られていたが、顧客が希望条件を指定し、複数の航空会社が逆に入札する方式をとれば、選択の余地は無限に広がり、顧客としては希望の条件が適い、航空会社としては、空席を回避することが可能となる、プライスライン社はこの販売仲介手数料として、1回の取引金額の5%を航空会社から受け取るというもので、決済方式はカード決済を使用する、というようなものであり、この結果、リバースオークションは爆発的な人気を集め、特許を買い取ったプライス・ライン社は、1999年には80万枚の航空券を販売し、米国成人の4人に1人を超える5000万人以上に認知されるインターネットのメガ・ブランドへと成長しました。

4.日本でのリバースオークションの現状

  

 日本では1999年にソニーがパソコンの部品調達で実行したのがおそらく最初で、(日経新聞199998日掲載)その後、電子部品や食材や資材などに幅広く適用され、2002年頃から事例も多くなっています、「すかいらーく」の食材調達サイトは早い時期からリバースオークションを始めており、調達コストの低減に寄与をしていたようです、最近では国土交通省が、発注工事に使用する主要資材をリバースオークション方式で調達するため、オークションを主催する業者の公募をしたということもあり、確実にリバースオークションというシステムは日本においても普及し始めている、需要があるということがいえると思います。

 現在、リバースオークションは経費削減をしたい多くの企業が注目している手法であり、リバースオークションを運営している日本の企業では、(株)コスト削減研究所や潟Wャパン・イーマーケットや(株)デイーコップや鰹、いビズスクエアなどがありますが、いずれも、米国のプライスライン社のような個人を対象とした販売システムではなく法人向けのコンサルティングの一環としての費用削減、BPOの手法として用いられており、成果をあげていますが、まだまだリバースオークションを導入してコンサルティングを行っている会社は大手でも少なく、需要面に対して供給面では普及をしているとは言い難い現状にあるようです。

5.今後のリバースオークションの展望

 では、なぜ、このリバースオークションという非常に有効なシステムが日本においては主に法人向けで、米国のように、消費者向け、個人向けのサービスとしては普及していないのかという疑問が浮かびますが、やはり、規制によるところが大きかったようです、以前であれば、航空券の例で言えば、運輸省が、航空運賃の下限額を定ており、客の希望価額でというわけにはいかなかった、それに加えて、ツアー用の航空券のばら売りによるIT運賃という日本独特のサービスが存在し、プライスライン社の航空券のビジネスモデルは普及しにくい状況があったようです、ただ、現在の日本であれば、航空券をふくめて、証券業界の手数料自由化や、書籍、CDの再販法撤廃等の検討等、各業界の規制緩和も当時よりは進んでおり、自由な価格設定ができるようになってきてますし、ITのインフラも普及をしており、ネットを使用しての購入であれば、個人といえどもまとまった金額として提示することは工夫次第では可能でしょうし、実際にネットでの購入も2005年度の総務省による全国消費実態調査によると、10年前に比べて2倍近くになり、どんどん増えてきているという現状です、この状況を鑑みれば、各業界、でリバースオークションのビジネスモデルが普及していくのは当然であり、時間の問題ではないかと思います。

 実際にそのビジネスモデルが現在の日本で構築できたとして、現在のネットを通じての価格よりもより安い価格を提供できるとするのであれば、思いつくだけでも、各業界、各会社への交渉というのは必要でしょうが、プライスライン社のビジネスモデル以外にも新幹線や特急の乗車券、不動産や住宅の購入、賃貸、リフオーム、ローン、結婚式、宴会の注文等すぐに考えつける事だけでも多数あります、収入源は手数料はもちろんですが、同時に見込まれる広告収入のことも考えれば、とてつもなく大きな市場になり、収入も見込めるのではないかと思います。



6.結論

 以上の事から、既存のやり方とリバースオークションというシステムを比べてみた際に、リバースオークションというシステムの方が非常に有効で、合理的で、且つ優位性を持ったシステムということが言えると思います、現在あるリバースオークションのビジネスモデル、リバースオークションというシステムを使用しての法人向けのコンサルテイングという手法の普及、成功は当然として、現在の米国のようなビジネスモデル、消費者、個人向けに対してのリバースオークションを使用して低価格でなおかつ、自分の希望通りのプランが組める、商品を購入できるというビジネスプランも日本で普及し、且つ成功するということがいえると思います、その意味において上記の有効、合理的、優位性のあるシステムに加え、非常に将来性があり、収益を見込めるシステムだということがいえると思います。